■ 第2回:会社方針表明・店員のリテラシー問題 アパレルショップ マーケッター 大野 氏(仮名) _______________ いざ!社長に直談判だ!  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ 社長に提案の時間を頂き、練りに練ったプランを説明する。 自分の中で成果に対する確固たる自信がないためか、時間の流れるのが遅い。 一通りの説明をこなしたあと、少しの沈黙のあとに、社長が一言発した。 「私もインターネットの可能性を感じていたんだ。 何か出来ないかと思っていた。よし、やってみよう。」 その言葉を聞いたとたん、安堵のため息と共に一方で、新しいことにはめっぽ う腰の重い店長の顔が頭をよぎった。プランは通ったが、僕でやり遂げることが 出来るのだろうか? 不安がよぎる。 「社長、メールを使って販促を行うことを、 社の方針として他の従業員に説明してもらえませんか?」 思わず口をついて言葉が出た。 「どうすればいいんだ?」 「いや、ただ『やる』と言ってもらえればいいんです。」 「わかった。」 毎週日曜日、営業時間終了後に行う店舗ミーティング。その日はいつもは出席 しない社長が出席していた。一通りのミーティングが終了したあと、社長が今回 のプランについて説明し、会社の方針として行ってゆくことを表明した。そして 今回のプランの実行責任者として、私が指名されることとなった。 接客・販売という分野を超えて企画を立て、責任者として指名された私として は、大変な喜びとともに、身の引き締まる思いだった。この企画はなんとしても 成功させたい。 社長に会社の方針として明言して頂いたことは、後々いろいろな点で私を助け てくれることとなる。 _________________ 現場は一筋縄では行かない…  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ミーティングの時の気持ちのまま、私は次の日、早速実行に移そうと店長とも う一人の販売員に今回のプランの説明を行った。しかし…話を聞いている2人の 顔は、見るからにやる気がない。 「いやぁ、インターネットはよくわからないしなぁ。」 「どれくらいの効果が期待できるんですか?」 否定的な意見が次々と出てくる。確かに、店舗にはパソコンが設置されており、 売上管理システムが導入されている。しかしその作業の殆どは私がやっている。 効果を問われても、経験がないために、全く私のほうでも予測が出来ない。「会 社の方針ですから」ということで、その場は取り繕ったものの、これは思ってた 以上に大変なことになってきたぞというのが率直な気持ちだった。 社長に対しても大見得を切っておりしかも信頼して任せていただいている。絶 対に失敗はさせたくない。 なにから始めればいいのだろうか? いろいろと考えた挙句、まずは全員でパ ソコンを使えるようになることから始めた。ゲームでも何でもいいから、パソコ ンに触れる時間を増やした。店舗で従業員がパソコンを触っている姿は、決して 悪いイメージのものではない。 アパレルの店舗というのは、そもそも営業時間の約7割はアイドルタイム、つ まりひまを持て余している。そのため、倉庫整理や商品のたたみ直しなど、店舗 内に動きを作り、お客様が入りやすい雰囲気作りを行っている。その作業の一つ として、パソコンを触っている姿があっても大丈夫だ。少なくとも販売員がする こともなく店頭で立っているよりはいい。アイドルタイムをうまく使ってメール マーケティングを行えば、ほとんどコストをかけることなく販促が可能になる。 各社員の家にパソコンがあるかを聞いてみると、店長は子供が使っているパソ コンがあるという。もう一人はパソコンは持っているが完全に埃をかぶっている という。私も、父親が使っているパソコンがある。しめた! 各自、家からパソ コンを使ってメールをしよう。私やもう一人の販売員は、携帯電話のメールを使 っていることから、問題なく使えるようになった。 しかし、店長のほうは携帯メールも使っておらず、少々てこずった。使ってく ださいといっても、店長にはなかなか積極的に使ってもらえない。そこで、時間 外に発生する業務連絡(いままでは電話で連絡していたもの)をメールで送るこ とにした。これなら店長もメールを見なければいけなくなるだろうと踏んだのだ。 はれて予想は的中。店長もメールを使えるようになった。これでようやく、 何とか社員全員でメールでのやり取りが出来るまでなった。 _________________ 効果を実感してもらうには…  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ メールを最低限使えるようにはなったものの、依然としてメールマーケティン グの効果に対する不信感は続いていた。どうにか説明できないだろうか? しか し、そういったデータもなく、それを収集するすべもなかった。インターネット を使って、情報をいろいろと検索する程度だった。 そこでまず、郵送のDMでは不可能だが、メールで出来ることを考えてみた。 ・手軽に発信できる。 ・1人1人に対して異なる情報を発信できる。 ・メールでお客様とコミュニケーションを図ることが出来る。 実は、この段階で、1人1人に対して異なる情報を発信できると考えていたが、 送信先アドレスが多数になったときにどうすればいいのかというところまでは知 恵が回っていなかった。 そういったことを店員に話してゆくうちに、店舗の売上や収支に敏感な店長は、 DMコストが削減できるという点に興味を持った。もう一人の店員は、よくわか らないが、そこまで熱心ならばと協力してもらえることとなった。 ようやく、店舗を挙げてメールマーケティングに取り組む準備は出来た。 しかし、大きな問題が残っていた。顧客データは蓄積されているが、そこには メールアドレスデータが殆どなかったのだ…。 第3回 EMM実践準備(2)メールアドレス収集・データベース構築 につづく