■ 第1回:業界背景、当初仮説などEMM準備着手まで アパレルショップ マーケッター 大野 氏(仮名) ___________________ 基本データ  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ◆ 会社概要 資本金:10百万円 業 務:メンズアパレル専門小売店 店舗数:2店舗 従業員:8名 ◆ 店舗概要 メンズスーツをはじめとする重衣料中心の品揃え。イタリア伝統のクラシコイタ リアテイストを日本人の体型に合わせ、日本人のためのスーツブランドを展開。 顧客層は25〜40歳あたりの、ファッションに敏感な大手企業サラリーマンが多い。 ◆ マーケッタープロフィール 入社5年目の販売員。半年ほど前、インターネットによる販売促進に注目し、ホ ームページを企画、公開の指揮者として活躍した。しかし、実際に販売しながら 「ホームページが実益に繋がっているのか」など悩み始めたところ、メールによ るマーケティングに着手しようと思いついた。 ______________________ 販売員は、店でお客様を待つだけなのか  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ 弊店は、イタリアのスタイリッシュなスーツを、日本人の体型にマッチさせた、 ファッショナブルなスーツブランドのブティックだ。販売員として働いて、約5 年。お客様のタイプ・体型に合わせて様々なファッションスタイルの提案ができ るようになってきた。 スーツを買いに足を運んでくださるお客様は、大抵リピーター。普段着よりも 身に付けている時間の長いスーツにこだわりを持ち、少しスレンダーなスーツで 仕事時間もスタイリッシュに過ごしたいというお客様が大半を占める。 しかし、いずれのお客様も、スーツに対してこだわりを感じる事が弊店に来る 動機。販売員としては、来てくださったお客様に対し最善のご提案をするだけだ。 より多くのお客様に来店いただくためには、動機の部分であるスーツへのこだわ りを触発しなければならない。それこそが、販売チャンス拡大であり、強いては 実益となるのである。 ____________________________ 販促=広告? コストに対するリスクが大きすぎる!  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ 来店したお客様にいかにアドバイスをするか、といったことばかり考えていた 私にとって、販売員として新しい方向性を考える時期がきていたのかもしれない。 販売チャンスを広げるため、何かできないのか。。。と販売の傍ら漠然と考える ようになった。しかし、販促なんて考えたことがない。とにかく「もっとお客様 に提案する機会が欲しい」と、ただ漠然と考えるようになった。 そんな私の短絡な思考に浮かんだのが広告という手段。しかし、効果は大きい、 と思う一方、「金が要る」とすぐに高をくくった。弊社には販促部に変わるよう なものはない。販促予算もないに等しいだろう。強引に予算繰りしても、今の経 営規模で打てる広告はないだろうとひとりで思い、誰に言うこともなく諦めた。 販売員として、「お客様にスーツに対するこだわりを持ってもらい、弊店の提 案するスーツスタイルを知って欲しい」と思う一方、「販促費用は割けない」と いう制約が私の頭を苦しめた。私はただの販売員。接客に明け暮れつつ、販促を 考えるが、知識もないのに考えてもアイデアは浮かばないもので、混沌とした日 々が続いた。そこで、今行っている販促活動を再度見直してみよう、と思いたっ た。 _______________________ 販促とはいえないダイレクトメールの効果  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ 弊店でお客様にアプローチする手段として行っているのは、主にダイレクトメ ール(DM)。新物入荷・特別招待会・セール開催などのご案内をしている。わ かっている効果として、特別招待会のご案内以外、あまり実益に結びついていな いということだ。新物入荷、セール開催などは、なぜ効果が出ないのだろうか。 DMは、会社で決まった形式で印刷して、封筒に詰め、宛名を印刷したラベル シールを貼るだけ。まあ、どこの店でもやってるダイレクトメールと全く変わり ない。どこもやってることだからこそ、お客様に十分にご案内することができて いないのかもしれない。 自分を置き換えて考えてみてもそう思った。DMは毎日のように届く。果たし て全部に目を通しているかというと、決してそんなことはない。封も切らずにゴ ミ箱に捨てることもある。そう、みんなに同じ物を配ってると思うからこそ、封 を開けてじっくり読んだら得になるような情報がないと決めかかっている。 そう考えると、お客様に十分にアプローチかけられていない、というのは、お よそ販促とは呼べない。 ___________________________________ メールマーケティングはどうだろう―――業界背景分析の上での仮説  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ そんななか、思いついたのが電子メールによるマーケティング。ショッピング サイトなどでは、メールマガジンなどを発行している。販促の一環として取り入 れるのであれば、DMなんかよりコストも安そうだし、手軽そうだし、何より会 社からの印刷されたダイレクトメールを待つよりも手軽に出せる。どうにかして、 弊社の販促として取り入れることはできないだろうかと調べてみた。 一般的にマーケティング目的のメールマガジンを発行しているのは、インター ネットに精通しているショッピングサイトなどが多い。しかしアパレル業界は、 まだまだインターネットなど情報通信を利用した販促戦略を十分に行っていない。 なぜ、インターネットなどを利用した販促的な考えがないのだろうか。 明確ではないが、インターネットに精通している人間が人材として揃っていな いからかもしれない。一概に決め付けるのはよくないが、アパレル業界で働くタ イプは、大抵が「洋服が好き」とか、「朝起きるのがつらいから、営業時間の比 較的遅いアパレルに入りたいと思った」などといった人間が多い。私も元々は洋 服が好きというのが販売員になった理由である。情報にも疎いし、インターネッ トに対する知識もかなり低い。 そんな業界気質を打ち出してみて、あえて、小売アパレルショップがメールマ ーケティングを行ったらどうだろうか、と強く思うようになった。もしかしたら、 業界体質的に無茶が出るかもしれない・・・と不安がよぎった。しかし、考えれ ば考えるほど「やらない手はない」という気がしてきた。 小売アパレル業界でインターネットに対する認識が薄い分だけ、メールマーケ ティングを先行して行うことが、お客様にとってインパクトになる可能性を秘め ているのである。DMよりも目新しい手法としてお客様の目を引くことになれば、 来店数の増加、強いては実益に結びつくだろう。スーツに対するこだわりを刺激 するといった意識付けの継続を行えれば、長期的な強みを発揮するのではないか。 それに、メールなら頭を悩ませられたコスト的な問題はほとんどないだろう。 比較対象になる小売アパレルショップもないから、少しでも成果があれば“見っ けもん”である。万が一のことがあっても、リスクは軽微。仮説も期待もどんど ん膨らんだ。 「よし、まずは社長だ」。メールマーケティングの手軽さ、低コストさに比べ て、先駆して得る成果は計り知れない――といった企画書を作り、確固たる自信 をもって口説き落とそう。自分自身の背中を押すためにも、すぐに行動に移した。 第2回 EMM実践準備(1)会社方針表明・店員のリテラシー問題 につづく